不倫、不貞、浮気の慰謝料・弁護士解説ブログ

私は不倫、不貞、浮気トラブルの慰謝料事件の法律相談を山のように処理してきた、都内の弁護士です。このブログでは、 私の豊富な経験から、不倫、不貞、浮気トラブルの法律問題について解説をさせていただきますので、少しでも読者の皆さんに役立つ情報をお届けできればと思っています。

第2回「不倫、不貞、浮気トラブルの慰謝料が高くなる要素は?」

1.不倫、不貞、浮気の慰謝料で、最も重要な算定要素は?

先日の記事で、不倫、不貞、浮気の慰謝料の相場感について解説をさせていただきました。

 

 

isharyoubenngosi.hatenablog.com

 

 

慰謝料は、不倫、不貞、浮気をされた夫または妻の精神的苦痛を慰謝するためのお金ですから、その「精神的苦痛」を金銭的に算定する必要があるところ、これを一概に算定することはできないため、個別の事案ごとに判断されているのが実情です。

 

そして、その算定要素としては、不貞期間の長短、不貞行為の頻度、不貞の主導性、婚姻期間の長短、子の有無など、あらゆる要素が裁判例や文献で紹介されています。

 

「要素が多すぎて分からない」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

しかし、その中でも、特に重要な算定要素があります。

 

それは、「婚姻関係の破綻の有無」です。

 

2.「婚姻関係の破綻の有無」とは?

少し硬い用語が出てきましたので、噛み砕いて解説をさせていただきます。

 

そもそも、不倫、不貞、浮気に基づき、慰謝料を請求できる根拠は、不倫、不貞、浮気が民法上の「不法行為」に該当するからです。

 

この「不法行為」に該当する理由について、最高裁は、不貞行為が「婚姻共同生活の平和の維持」という権利または法的保護に値する利益を侵害するから、と判示しています(最三小判平成8年3月26日民集50巻4号993頁参照)。

 

この「婚姻共同生活の平和の維持」を侵害するからこそ、不倫、不貞、浮気は民法上の不法行為に該当し、慰謝料請求の理由となります。

 

そうすると、この「婚姻共同生活の平和の維持」が侵害された程度に応じて、慰謝料の額が変わってくることにも頷けます。

 

「婚姻共同生活の平和の維持」が最も深く侵害された場合が、すなわち婚姻関係の破綻であり、これは典型的には、不倫、不貞、浮気が原因で、夫婦が離婚に至るケースです。

 

不倫、不貞、浮気が原因で夫婦間が離婚に至ってしまうと、「婚姻共同生活の平和の維持」が究極的に侵害された結果となりますので、その分、慰謝料も高くなってしまいます。

 

戸籍上は離婚していないものの、夫婦が別居に至り、不貞をされた側の配偶者が離婚を強く要求している場合なども、夫婦関係が修復に至る可能性がなく、実質的に婚姻関係が破綻したと認定される場合があります。

 

逆に、「婚姻共同生活の平和の維持」に対する侵害が軽いものにとどまる場合、すなわち、典型的には、不倫、不貞、浮気があったにもかかわらず、夫婦は離婚に至らず、夫婦の同居も維持されている場合などは、その分、慰謝料も低くなる傾向にあります。

 

「夫が不倫したのに、妻が離婚しないケースがあるの?」と疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、離婚しないどころか、同居を継続するケースも実際には存在します。

 

3.まとめ

以上のように慰謝料の算定に当たっては、不倫、不貞、浮気によって、夫婦の関係にどの程度の亀裂が入ったのか、すなわち「婚姻関係の破綻の有無」が、慰謝料の算定に重要な影響を与えるといえるでしょう。

 

もちろん、その他の事情(不貞期間の長短、不貞行為の頻度、不貞の主導性、婚姻期間の長短、子の有無等)も慰謝料に影響を与える要素ですので、これらの点についても、別の記事にて解説をさせていただきたいと思います。